熱処理

まずは代表的な加工として、熱を加え、生地を整える加工を紹介します。ヒートセットとも呼ばれます。アイロンをかけると生地が伸びますよね。生地の場合は量が多いため、アイロンではなく、ヒートセッターを使います。生地の両端に位置決めされた針を刺して固定し、高温の炉に投入します。この時、通常繊維は縮むので緩めに固定しておき、収縮すると、ピンと貼るように針の幅を設定しておきます。温度と、ピンの幅が命といっても過言ではないでしょう。工業用は連続的に生地が投入できるようになっています。乾熱のケースが多いですが、温水の中に投入するパターンもあります。しかし結局乾燥させるので最終的には同じです。温水に入れる目的は様々です。洗い、薬剤の塗布など目的に応じて加工されます。

防シワ、形態安定加工

特に綿などのセルロース繊維は、吸湿した状態で変形すると、分子鎖がズレ、新しく水素結合して固定されてしまいます。逆を言えば、アイロンでスチームを当てると、元に戻せるわけですが、そのズレを起きにくくする加工が防シワ、形態安定加工です。防シワと形態安定加工は意味合いとしてはほとんど同じですが、形態安定加工の方が、より強力なイメージとして捉えていいでしょう。現在では死語になっていますが1990年代に流行した「W &W」wash and wear (洗ってすぐ着れる)を目指した加工です。手法は多岐にわたりますが、要は分子間に架橋を作り、固定してしまおうということです。

Yシャツだけでなく、カーテンのプリーツ形状の保持などに用いられています。

防水、撥水加工

防水は繊維の隙間を埋めて、水を完全に通さないということになります。防水加工は繊維表面を樹脂やゴム等で覆って、皮膜を作る必要があります。皮膜を作らなくても、すでに水を通さないポリ塩化ビニルなどのフィルム状のものをラミネート(貼り合わせ)てラミネート生地にする方法もあります。

撥水加工は表面を疏水化して水を弾くようにする加工で、生地において、糸の間は開いたままで気体が通ることはできる状態です。撥水加工方法はさまざまで、パラフィン、ステアリン酸、シリコン、フッ素、ポリアクリレート、ポリウレタンなどが用いられます。繊維の最外層にアルキル基、シリコーン基、メチル基を持つ化合物をつければ撥水性となります。

防汚加工

防汚加工はSR加工とも呼ばれます。SRはソイルリリース(汚れを落としやすく)、ソイルレジスタント(汚れをつきにくく)の2つの考え方があります。

ソイルリリースは、疎水性の繊維を親水性にすることで実現します。なぜなら疎水性の繊維は水を弾くので洗浄性が悪いからです。また、疎水性の繊維は静電気が起きやすく、埃がつきやすいとも言えます。そのため、親水性の薬剤をつけ、汚れを落としやすくします。

ソイルレジスタントはフッ素系樹脂加工等により、撥水性もしくは撥油性を付与したものです。加工を施すと親水性の汚れが付着しにくくなります。こちらはSGソイルガードとも呼ばれることがあります。

帯電防止加工

静電気を発生させないまたは、電気を逃す加工です。静電気で痛みを伴いたくない場合の対策は以下の通りです。摩擦によって帯電した状態で導電体(金属など)に触れると一気に電荷が移動します。

静電気を発生させないために摩擦係数を減らす方法です。電荷の移動を抑制します。これには界面活性剤が用いられます。

静電気をどこかに逃がすために、空気中の水分を通して静電気を徐々に逃がす方法です。こちらは繊維を親水性にする必要があります。ただし、そもそも空気中が乾燥している場合は効果がありません。また、コロナ放電という現象を利用する方法があります。繊維一本一本の先端から、空気中に放電します。帯電物から電気的なチカラが繊維先端に集まり、空気中の気体分子が+イオンと−イオンに分化し、+イオンが帯電物のマイナスの電荷と中和し、放電します。こちらは導電しやすい薬剤があれば、繊維の先端から放電しやすくなります。