撚り(より)は糸の長手方向の軸を中心に回転させてねじることをいいます。ただねじるだけと撚りを甘くみてはいけません。撚りは生地にする際に多大な影響を及ぼします。撚りが必要な理由はいくつかあります。以下で解説します。

何故撚るのか?

まずスパン糸の場合短い繊維を集めて引き伸ばしただけではそもそも糸になりません。撚れば撚るほど軸中心方向にトルクが発生し短繊維同士の摩擦で抜けにくくなります。スパン糸に撚りは必須です。

ではフィラメント糸はどうでしょうか。一本の連続した糸のため撚らなくても糸は抜けません。何のために撚るのかというと理由は大きく3つあります。

①撚って引き締めることで摩擦に強くする

糸は撚れば撚るほど硬くなります。試しにティッシュペーパーを短冊状にして撚ってみましょう。回転数が多くなればなるほど硬くなるはずです。繊維一本一本が強い摩擦で収束しているため、繊維が引き出されたり引っかかりにくくなるためです。自動車シート生地など摩耗に対して高い性能を発揮させるためには撚りが重要な因子となります。

②製織、製編し易い

糸が撚られていないと例えば織物を作るときに経糸が数千本引き揃えられているとすると隣同士の甘い撚りの糸が絡み合ってしまったりします。その際に経糸のある糸は上に、ある糸は下に移動するとすると糸が切れてしまうでしょう。これが頻発すると製織どころではありません。

③糸を組み合わせて太くする

糸の繊度のラインナップはおよそ決まっています。特注品はコストが跳ね上がりますので、何本かを撚り合わせて、糸を太くした方がコストメリットがあります。また上述の複数の理由で撚る必要性が高いため、撚り合わせて糸を太くすることが多いといえます。撚り合わせることを合撚(ごうねん)といったりします。また違う色の繊維を合わせたりして変わった色の糸を作るということも可能です。

撚りの方向

撚りの方向は2種類あります。一般的にアルファベットのSとZで表します。糸が撚れた際に側面から見える斜線の向きでSかZを決めています。

右回り(回時計回り)=S撚り(右撚り)

左回り(反時計回り)=Z撚り(左撚り)

撚り回数

撚りの回数は一般的に1mあたりに何回撚っているかを指標とします。そのため単位は[回/m]もしくは[T/m]となります。大文字のTはturn(ターン)の頭文字で「ターンパーメーター」という呼び方をします。

例として1mあたりに150回撚っていて、Z撚りの場合

Z150[T/m]

と表記します。

撚り回数による分類

糸の撚り回数によって分類をしています。明確に規定があるわけではないようで、文献や会社などによって回数が異なる可能性があります。おおよその目安と考えてください。

甘撚(あまより) 〜500[T/m]

糸のばらけを少なくし、製造しやすくする目的であることが多い。

中撚(ちゅうねん) 500〜1000[T/m]

主に糸を硬くし生地に張りとコシを出す目的で行う。

強撚(きょうねん) 1000〜[T/m]

主に生地をコシのあるものにし、糸のうねりを利用した独特の風合いを出す目的で行う。

撚りの組み合わせによる分類

片撚り(かたより)

1本または2本以上の糸を引きそろえ撚りをかける
諸撚り(もろより) 甘撚の片撚り糸を2本以上引きそろえ、片撚りと反対方向の撚りをかける
駒撚り(こまより) 強撚の片撚り糸を2本以上引きそろえ、片撚りと反対方向の撚りをかける
壁撚り(かべより) 片撚りの太繊度糸と、無撚りの細繊度糸を引きそろえ、片撚りと反対方向の撚りをかける
飾撚糸(かざりねんし) 壁撚りの組み合わせでループなどを作る

上記のように片撚りを組み合わせてさらに撚りをかけることがあります。片撚りは1つの糸を撚るため単糸(たんし)、単糸2つ以上の糸を組み合わせた糸を双糸(そうし)といいます。

また諸撚り糸などを作るために単糸を撚っておくことを下撚り(したより)、下撚りした糸を合わせて撚ることを上撚り(うわより)といいます。さてここで上撚りと下撚りの回転方向ですが基本的には反対方向にかけます。同方向にかけると糸が安定せず、糸がくるくる巻きついてしまう「スナール」という現象が起きやすくなります。特別な理由がない限り反対方向にかける方が良いでしょう。

上撚りS 下撚りZ → 安定
上撚りS 下撚りZ → 不安定
スナール