生地は当然のことながら強さが伴っていることが必須です。特に重要な機械的特性について解説します。生地は金属などとは異なり、方向で大きく変化します。そのため、たて方向、よこ方向、場合によってはバイアス方向(斜45度)の測定をし、性能を確認する必要があります。
引張強さ
応力ーひずみ線図をかくのが代表的な表し方となりますが、まず、引張強さはどこの点をいうのかということが問題です。答えはグラフを書いたときに最も高いポイントを引張り強さといい、破断して、急激に応力が落ちた、最後の点ではありません。こちらは引っ張り試験機で引張りますが、応力が頂点にいくまでにはすでに何本かの糸はぶちぶち切れています。つまり破断はしなくても、引張強さの頂点にいくまでには、生地は幾分かのダメージを受けていることを忘れてはいけません。あくまでも引張り強さは頂点の値というだけです。エンジニアの方は、応力ーひずみ線図、(荷重ー伸長曲線)の全体を観察する必要があります。測定方法は次の通りです。
- 長さ約300㎜、幅50mmの試験片を、各方向で採取し、引張試験機の上下のチャックに取り付ける。
- 上下のクランプ間は200㎜で、200㎜/分の速度で引張る。
- 試験結果は、生地が破断した時の最大値とする。
この試験の際はチャック部ににゴム板を挟むと正確な結果がでます。チャック部は応力集中しやすく、通常よりも低い値が出てしまいます。チャック切れを起こしたらもちろん測定し直しです。チャック切れ防止のために対策しましょう。(シビアな測定の際は、ゴム板の影響も考慮する必要があります)
引裂強さ
特に衣料などの繊維製品は引張よりも、この引裂きによって破かれることが多いです。引張よりも引裂きの方が強さが小さいからです。なぜかというと生地の引裂きはは糸一本一本が順次切断されていくからです。測定方法は次の通りです。
- 長さ約250㎜、幅約50mmの試験片(又は長さ約250㎜、幅約100mm)を各方向それぞれ採取
- 試験片の短辺中央から直角に100mmの切れ目を入れ、引張試験機のチャックに取り付け
- 100mm/minの速度で引張り、切れ目から引き裂く。
- 試験結果は、生地が引き裂かれた時の最大荷重とする。
- 引き裂かれた状態に異常があった場合は、状態を記す。
引裂き試験では、糸が抜けて引き裂けないこともあります。またタテの方向に引き裂いたのに、ヨコ方向に引き裂けうこともありますので、イレギュラーな状態はしっかりと残しておく必要があります。試験後のサンプルを残しておいたり、写真を撮っておくことも重要ですね。
摩耗強さ
生地が摩擦されると、内部の繊維は引張り、圧縮、屈曲、ねじれなどの外力を受け、毛羽立ち、次第に弱化します。見た目と強さに影響を与えます。試験方法は主に以下のような方法で行われます。
ユニバーサル形法: 研磨紙往復運動でこする。一般衣類の通常使用における摩擦を想定
スコット形法: 試験片を往復運動でもむ。生地が折れながらもまれるシーンを想定
テーバー形法: 試料を回転させ、摩耗輪をこする。比較的激しい摩耗を想定
アクセレロータ形法: 円筒内壁に研磨紙をつけ、試料を回転させる。ごく常時加わる弱い摩擦を想定
マーチンデール法: 摩擦布をリサージュ運動させて擦り付ける。複雑な動きの摩耗を想定
ユニホーム形法: スプリングスチールブレード、もしくは研磨紙摩擦子をこする。試料ホルダーも同方向に回転し、回転数のわずかな差で摩擦。連続した一方向の摩擦を想定
上記のようにたくさんの方法があります。試験結果として、破れるまでの回数等を用いたりしますが、それを知ってもあまり意味がないことも多いと思います。摩耗で破れるまで使うシーンが少ないからです。多くのエンジニアの方が勘違いしている点だと思います。重要なのは、自社製品がどんなシーンでどのくらいの想定で使われる見込みがあるのか。そしてその見込みまで試験をしたときに、どの程度のレベルまで生地の品質が保っていられるか、ではないでしょうか。そこにあった評価方法と、評価基準を自分で考えなければなりません。つまり、何も考えずにこの試験を行っても他の生地との相対比較しかできず、絶対的に良い品質かどうかは見極められないと言えます。