一般的に熱の伝わり方は3つあります。

伝導 高温部から低温部へ熱が移動する

対流 空気や水などの流体の移動で伝わる

放射 伝達媒介なしで電磁波の形で伝わる

の3つです。特に衣類は人体を覆い保温のために用いられます。人体は発熱体でもあるので、衣服で覆い、熱移動を防ぐ工夫が必要であると言えます。

保温性

保温性は材料内の熱の移動に関する性質で、保温率が一般的に用いられます。保温性は発熱体を使って、発熱体を覆った時と、覆わないときの熱損失を用いてあらわします。覆った時の熱損失、Hc覆わない時の熱損失Hoとすると

保温率(%)=[(HoーHc)/Ho]×100

で表されます。このとき熱の移動は体表面→被覆内層→被覆材料→被覆外層→外気の順番で行われます。ではこの熱移動を抑えるにはどうしたら良いでしょうか。大きく4つの因子があげられます。

①空気層の厚さ

空気は熱伝導率が低い気体です。そのため空気層がたくさんあることが熱移動しにくくする要因となってくれます。しかしながら実生活環境では空気層が厚すぎると、その空気層に対流が起きてしまいまうことがあります。対流が起きない工夫が必要ですし、程よい厚さがあることが重要です。

②生地の厚さ

こちらも厚ければ厚い方が保温性は高まります。しかし実質は生地というより、生地の中の空気層に依存しているというデータがあります。

③密度

密度が上昇するにつれ、熱伝導性は高まります。空気層が少なくなるためです。そのため密度が小さい方が保温性が高いと言えますが、低くなりすぎると対流効果によって保温性が落ちてしまいます。バランスを取るもしくは別の素材で対流を抑えるなどの組み合わせでカバーすることができます。

④湿度

布の水分量が増えると保温性が低下します。雨に濡れると急激に寒く感じる体感をしたことがあるでしょう。熱伝導率が水分で高くなってしまうためです。

⑤風速

風速が速いと対流によって保温性が低下します。目の荒い生地の熱損失は非常に大きくなります。風速の大きさで急に熱損失が変化します。目の荒いセーターは風が吹かない穏やかな日は暖かいのですが、風が強い日は保温効果が少ないと言えます。風が強い場合は生地が薄くても目が詰まった生地の方が暖かく感じます。

このことから、暖かいアウターは、風を防ぐ防風層を最外殻に、空気を含む層を内側に備えるのが良い方法と言えるでしょう。

通気性

通気性は生地の隙間を通して空気が移動する性質のことを言います。通気性は通気度という指標で表します。フラジール形試験機という試験機があれば簡単に測定できます。掃除機のようなファンを使って測定します。当然通気度が高ければ目が荒いということになります。

通気度は通過する空気の量V(㎤)、試料の面積A(㎠)、試料両側の圧力差p(mmH2O)、時間t(s)とすると、

通気度P=V/(A・p・t)

で表されます。実際はpが一定の値になるよう試験機で各種パラメータを調整して通気度を測定します。試験機のマニュアル通りにやれば上式はあまり気にする必要が無いと思います。

通気性に及ぼす因子をあげるとたくさんありますが、要はカバーファクターが大きいのか小さいのかで判断するのが最も理解しやすいでしょう。しかし織物や編み物は2次元ではなく3次元的に糸の屈曲もありますのでその隙間から空気が通ることも考えられます。厳密に言うとカバーファクター以外の空隙も加味しなければいけません。