風合いとは人間の感覚により評価される生地独特の特性です。何とも曖昧で数値化しにくい指標です。しかし我々はこの風合いを確実に感じ取り、評価しているのです。明確な物理量として誰もが納得ができる指標がなかなか無いのが現状ですが、少しでもこの『風合い』を評価しようと各メーカー、大学などで努力を重ねているのが現状です。感覚的な指標は個人差があり、とても評価が難しいです。例えば、触り心地を良くするため繊維の繊度を下げてマイクロファイバーをタオル織りで織りあげ、超柔らかい生地を作ったとします。しかし手が荒れている人はマイクロファイバーが捲れ上がった手の皮に引っかかり、すごく不快であった、などということも生じてしまうのです。

風合いは主に布からの情報を「視覚」、「触覚」、「聴覚」の三感から感じ取って評価をします。

風合い計測の基本:官能評価

官能評価というと少し難しいですが、要はアンケートです。ただ、このアンケートにもやり方があります。正しい結果得てアウトプットするために手法選びが重要です。最適な評価を選びましょう。以下に4つの方法を紹介します。

①一対比較法

試料を2つずつ提供し良・否を判定する単純な方法です。試料がA〜Dの4つの場合の例を示します。

A VS B
A VS C
A VS D
B VS C
B VS D
C VS D

総当たり戦です。これで点数をつけて、どれが良いのか導き出すことができます。デメリットは試料の数が多いと膨大な数の判定をしなければなりません。この例で言うとAは3回出てきますが、3回とも評価をすべきです。既に評価した試料だからと省略してしまうと正しい結果が出てきません。より偏りなく評価するには評価の順はランダムにしましょう。

②順位法

評価する試料を1人の評価者に対して同時に提供して、1番から順に順位をつける方法です。

評価者 試料A 試料B 試料C 試料D
評価者① 1 3 2 4
評価者② 2 3 1 4
評価者③ 2 4 1 3
評価者④ 1 4 3 2
順位和 6 14 7 13

上記の場合ですと、試料Aが順位和が小さくて良い結果と言えます。一度にたくさんの試料があっても判定しやすいです。ただし試料間の差が似たり寄ったりだと微妙な結果が出てきます。評価者が少なければ判定は困難でしょう。

③絶対評価法

各試料に対して評価を与える手法です。例えば10点満点で評価をします。

評価者 資料A 資料B 資料C 資料D
評価者A 3 2 9 7
評価者B 2 6 8 6
評価者C 8 3 9 5
評価者D 4 8 10 6
得点和 17 19 36 24

 

上記の例では試料Cが最も良いと評価できます。デメリットは評価者個人の差が大きいということです。ターゲット外の評価者を入れると大きく狂ってしまう可能性もあります。誰に評価してもらうか、評価者の嗜好に偏りがないかを確認して行いましょう。また基準となるもの(これが5点です。など)があると良い結果が得られやすいでしょう。

④SD法

試料1つずつに対して、対の形容語を用意して評価をする方法です。

 

  非常に やや どちらでもない やや 非常に  
かたい B A       やわらかい
あたたかい       B A つめたい
おもい       A B   かるい

 

それぞれの試料に対して評価を行い、色分けすると結果がわかりやすくなります。上記例は5段階ですが、段階は任意です。この方法の一番の問題は解析が難しいことです。統計学の専門の知識がないと、データを取っただけで結果を処理できず、説得力のある結論に持っていきにくいといえます。

まとめ

これらの手法を用いることで比較的容易に風合いという曖昧な指標を定量化することができます。是非活用してみてください。