絹は天然に存在する天然繊維です。蚕と呼ばれる動物が糸を作り出すので、天然繊維の中でも動物繊維に属します。綿と決定的に異なるのは長繊維であることです。蚕は糸を口から吐出しますが、最初から最後まで途切れることなく吐き続けるのです。その長さはなんと1000m以上!平均して1500mほどまで達します。なぜここまで必死に吐き続けるのかというと、サナギになる前に自身を天敵から守るためのシェルターを作るためです。このシェルターを繭(まゆ)と呼んでいます。糸でできていると言っても触ると非常に硬いです。糸を採る際は最外殻から糸をほどいていきますが中には蚕がいます。糸をほどきやすくするためお湯で煮るので、その際に蚕は死んでしまいます。残酷ですが美しいシルクはこのようにして蚕から糸を頂いているのです。
絹の特徴
なんと言ってもその美しい光沢が特徴でしょう。絹の断面は三角形を丸めたような形状をしています。側面が平らであるため丸い断面よりも反射光がまとまって目に入ってきます。また、蚕が吐出しており、断面は常に一定ではないため化学繊維のような常に同じ輝きではありません。これにより人工的に作られた糸よりも、落ち着いた独特の高級感が生まれます。
絹の種類
大別すると養蚕によって得られる「家蚕」と天然から得られる「野蚕」の2種類があります。現在の絹はほとんどが家蚕であると考えて良いでしょう。
よく知られている白い繭を作る蚕が家蚕です。5000年以上前から中国で扱われ、人間が工夫して、蚕の家畜化に成功しました。家蚕は非常におとなしく、与えられた桑の葉を食べ、逃げ出すことなく、とてもしなやかで美しい糸を作り出してくれます。また、色が白いのは染めるのに都合が良いため、白い糸の品種が選ばれていったということです。この蚕は手のかかるやつで自分の近くに餌を置いてあげないと死んでしまうのです。家畜にすることで自ら生きる力を失ってしまったのです。
しかし、蚕は本来野生にいる虫です。繭は外敵から身を守るシェルターですから、生存するために必死で生きている品種もたくさんいます。世界の野山に生息し、野山の葉食べて生きています。食べる葉は品種ごとに異なります。また繭の形や大きさ、色なども様々です。このように野生に生きている蚕を野蚕と言います。家蚕と比較すると大きく堂々たる風貌です。
野蚕は圧倒的に流通量が少ないですが、しなやかで強度が高く、家蚕よりも高値で取引されています。蚕は本来野生にいる虫です。繭は外敵から身を守るシェルターですから、生存するために必死で生きている品種もたくさんいます。世界の野山に生息し、野山の葉食べて生きています。食べる葉は品種ごとに異なります。また繭の形や大きさ、色なども様々です。このように野生に生きている蚕を野蚕と言います。野蚕は糸に色が付いている場合が多いです。薄い黄色、黄緑や茶色などがあります。素材を活かすとすると利用シーンが限られます。しかし太くてコシがあり、シャリ感(こすり合わせるとシャリシャリいう感じ)に高い価値を見出されています。
絹の産地
絹の主な産地は上記のようになります。絹はは日本も含め、世界各地で生産されています。圧倒的に多いのは、以下の3国です。
①中国 12万トン
②インド 2万トン
③ウズベキスタン 0.1万トン
絹の構造
蚕が糸を吐いた後は大きく2種類の成分で構成されています。フィブロインとセリシンです。この中でセリシンを取り除いたフィブロインが絹糸となるわけです。フィブロインは羊毛と同じように直鎖状に連結したタンパク質です。蚕の口の形状が三角形となっており、2対あります。そのため、糸が1本のように見えますが、フィブロインの塊がが2本セリシンに覆われてくっついている状態になっています。
絹の作り方
①乾燥 製糸工場に入ってくる繭はほとんどが生繭であり、そのまま放っておくと繭の中のサナギが成虫となって繭に穴をあけます。そのようになる前にサナギを殺してしまいます・・・。仕方が無いですね。はい。糸にするまでの間にカビが出たり腐敗したりすることがないようにしっかりと乾燥し、水分率を減らしてから貯蔵します。
②選繭 品種や個体、生産された環境などによって形や品質が異なります。そして、繭の中には途中で死んでしまい体液が出て汚れている繭や、繭が薄いなど製糸に不適当な繭が混入しています。品質の良い生糸を作るために、あらかじめこれらの不良繭を選別します。
③煮繭 繭糸は互いにセリシンという物質で接着しています。そのためお湯を使って煮熟しています。
④索緒・抄緒 煮熟した繭の表面をこすると糸口が引き出せます。最初はからまっていますが、しばらく引き出していくと、1本の糸口になります。
⑤繰糸 給繭機に移し、目的の太さになるように何本か合わせて1本の糸に集束させて機械で巻き取ります。
絹の性能
一本の繊維長が600から1500m程度と天然で最も長い繊維長さを誇ります。絹繊維はヤング率が大きく強度、伸度が大きい繊維です。
理由は少し難しい話になるのでスルーOK。羊毛に比べて側鎖の小さいグリシンやアラニンなどの炭化水素系アミノ残鎖が70%以上占めることから繊維分子が配列しやすく、結晶性が良いと言えます。
絹の取り扱い
比較的デリケートな素材です。ヒドロキシル基を持つアミノ酸残基であるチロシン、セリンなどが紫外線で変化を受けるので日光で強度低下、黄変が起こります。また塩素系の薬剤で黄色化するので注意が必要です。
その他
絹はフィブロインとセリシンでできているという話をしました。糸はフィブロインですが、セリシンは生産時の煮繭の時にお湯に溶けていってしまいます。しかしこのセリシンにはすごい力があるのです。かつて養蚕が盛んだった頃、養蚕は女性が主体となって行なわれてきましたが、水仕事なのにもかかわらず、養蚕業に携わっている女性の手はみんな綺麗だったそうです。その理由がセリシンです。現在化粧品にも使われています。セリシンには、セリンなど水酸基を有するアミノ酸含量が40%含まれます。水酸基を多量に含むため、セリシンは保湿性に優れており皮膚のしわを防ぐことが可能であると考えられています。