織機とは、織物を織る機械のことを言います。タテ糸を上下に開くようにし、その間にヨコ糸を挿入して整えることを繰り返していきます。織機には様々な種類があります。多くの名前がついた織機が存在しています。これに関してはヨコ糸の挿入方式でつけられた名前もありますし、タテ糸の上下方法によってつけられた名前もあります。また織機メーカーの名前で呼ばれることもありますので混同しないように理解しておくことが必要です。以下で大きく分類し整理しましょう。

タテ糸の動きによる分類

ドビー織機

ドビー織機はドビー装置によりタテ糸を上下させます。例を挙げると4000本のタテ糸があったとして2000本をAの綜絖(そうこう)、2000本をBの綜絖に通しておいてA群をまとめて上にあげる、もしくはB群をまとめて上にあげるというように、糸群を作る方法です。単純な平織りであれば隣同士の糸が互い違いに上下しているため、2枚の綜絖があれば実現できます。ドビー織機によって異なりますが、この綜絖の枚数を何枚搭載できるかが仕様で異なります。8枚、16枚が一般的で32枚は多い部類に入るでしょう。枚数が多ければ実現できる柄のパターンが増えていきます。

ジャカード織機

タテ糸一本一本の動きを制御するジャカード装置が付いている織機です。

ヨコ糸の挿入方法による分類

シャトル織機

シャトルは日本語で杼(ひ)とも呼ばれます。シャトルは簡単に言うと糸がまかれたボビンを含んだケースです。このケースごとヨコ方向に運ぶとボビンから糸が引き出されてヨコ糸となる訳です。その際に決定的なデメリットが存在します。それはボビンの糸がすぐに無くなってしまうことです。たくさん巻けば良いのですがそうすることでサイズが大きくなってしまいタテ糸の間をすり抜けれなくなってしまうため限界があります。ボビンの糸が終わった際は新しいシャトルに入れ替える必要があります。このためシャトルをいくつも準備しておく必要があります。シャトルの入れ替えは自動化されることとなりましたが、杼を左右に飛ばす速度にも限界があり、現在の工業製品ではほとんど見かけません。一部伝統工芸品や、ハンドメイド製品を作るために使用されているケースが多いのではないでしょうか。最大の特徴は右から左、左から右と交互に挿入に連続しているためヨコ糸は蛇行し、折り返し地点でも繋がっていることが特徴です。後述する織機は常に一方向から挿入されその都度ヨコ糸を切ります。このためヨコ糸の端末の処理が不要で生地がばらけてしまうことがありません。

グリッパー織機

グリッパー織機は糸を掴むことができる小さな金属製の部品を弾き飛ばして糸を運びます。グリッパーは軽量で数十グラムなため、シャトルよりも低エネルギーで高速に、長い距離を飛ばすことができます。スイスのスルザー社の織機がこの種の織機のシェアをほぼ独占しています。現在でも多く使用されているようです。

レピア織機

レピア織機は速度を除いて最も使いやすく汎用性が高い優秀な織機だと思っています。なぜならどんな糸もしっかりと運んでくれるからです。私自身最もお世話になった織機です。レピアと呼ばれる金属製のヘッドがついた棒でで糸を掴み、織物の端から中央まで運びます。もう一方の端からもレピアヘッドの相方がきて中央で合流して糸を受け渡す仕組みです。受け渡ったら相方も元の端まで戻り、ヨコ糸を運びます。その後糸が切られて、再度切られた糸をレピアが運んで受け渡すの繰り返しです。織物はヨコ糸の色や種類、繊度を変えることができますが、実はこれが作る側としては厄介なことです。シャトル織機であればいちいちシャトルを入れ替える事になります。その点ではレピアは糸を直接掴んでくれるため多少繊度の差があろうと糸種が異なろうと掴んでくれるのです。ただしモノフィラメントとマルチフィラメントの組み合わせであったり、あまりに繊度に差があると難しいかもしれません。どの糸をつかませるかはプログラムしてガイドが入れるべき糸が通ったガイドがレピアの前に降りてきてくれます。レピアには多くの種類が存在します。運びたい糸に合わせて選択しますが、機屋の職人さんの経験と勘みたいなところがあります。現在でも非常に多く使われています。

ウォータージェット織機

ウォータージェット織機は水流の力でヨコ糸を運びます。レピアはあくまでも金属の棒なので「目にも止まる」速さが限界です。そこで固体でなく流体で運んで「目にも止まらぬ」速さで織物が出来ないかという発想です。ただし、使用には条件があります。それは疎水性であること。わかりますか?疎水性の反対は親水性。水を吸収しない糸である必要があります。例えばポリエステル等の合成繊維は疎水性です。綿は植物であり水を吸う導管があるので親水性と捉えます。水を含んで重くなってしまうのです。水は流れができれば流速の低下が少なく、発散されるわけではないため比較的省エネルギーで稼働できます。よって高速で大量生産に適した織機であると言えます。

エアジェット織機

エアジェット織機は最も高速な織機です。空気の力で糸を飛ばします。メインのノズルで糸を飛ばしますが、空気抵抗で減速してしまうため、途中の地点に何箇所かサブノズルがついていてそこからも空気が出ることで運糸を補助しています。見ていても速くてヨコ糸の動きを捉えることはできないでしょう。現在では技術の進歩により多種の糸が運べるようになっているようです。おそらく合成繊維のモノフィラメントはあまりに表面がツルツルしていて空気の抵抗がなく運べない、もしくは挿入ミスが多発すると思われます。軽量で低繊度、スパン糸やマルチフィラメント糸であれば超高速で織物が作成できます。

まとめ

ヨコ糸とタテ糸の動きによる分類があることを説明しました。このことから例えばジャカード+エアジェット織機、ドビー+レピア織機など多用な組み合わせがあるということを理解いただけたでしょうか。

まずは複雑な機構がついていない、手動の織機で原理を理解するのが良いかもしれません。