接触冷感

近年は様々な接触冷感グッズが市場に登場しています。接触冷感は着用した時に冷たく感じるものですが、どんな原理であるのか、どのような方法で実現しているのでしょうか。また効果の裏には必ず背反事項があります。メーカーの宣伝文句だけを鵜呑みにしないように知識をつけましょう。

熱伝導率

接触冷感は基本的に触った際に熱を逃すことで実現します。熱を逃すということは熱の伝わりやすさ「熱伝導率」が一つの指標となります。熱伝導率は大きければ大きいほど熱が伝わりやすいという指標です。具体的には1平方メートルの板において、厚さ1mの板の両端に1℃の温度差がある時、1秒間に流れる熱量を表しています。

材質熱伝導率(単位:W/m・k)
アルミニウム236
67
ガラス1
0.6
木材0.2
空気0.02
ポリエステル    0.20
ナイロン      0.38
アクリル0.21
レーヨン0.58
綿0.54
0.44
羊毛0.37
0.63

空気が圧倒的に小さいことがわかります。そして繊維は比較的小さい数字を示しています。金属は非常に高い値です。接触冷感として比較的よく使われるレーヨンや麻は繊維の中では熱伝導率が高い部類であることがわかります。

どうしたら熱伝導率が上がる?

繊維の熱伝導率(W/m・k)はほぼ決まっています。なので熱伝導率の高い素材を用いるのが1つの手です。次に鍵となるのが水です。水は0.6と伝導率が高いため、空気中の水分を含むと熱伝導率が上がると言えます。さらには気化する際に熱を奪ってくれるためより涼しく感じやすいと言えます。このため、繊維中に吸水しやすい素材を入れ込んだり、親水性に改質したりした素材が提案されています。ここで注意が必要です。吸水(吸湿)しやすいということは水分が入る瞬間に吸湿発熱が起こります。気化する際に熱を奪うのと逆の現象がごく当たり前に起こります。このことは発汗すると逆に発熱して熱くなると言えますので、覚えておく必要があります。

指標は熱伝導率だけではない

実際の製品の状態や温度環境でどの程度熱移動が起こるのかは接触冷湿感評価値Q−max(W/cm2)で数値化されます。これも大きい方が接触冷感を感じやすいです。2.0位上で効果ありとされていますが、この数値だけにに踊らされては行けません。この数値は評価方法上凹凸のない生地が熱を伝えやすく大きな値となりますが、凹凸がないということは人体に密着しやすく、ムレを生じる可能性があります。この値を大きくするためだけに作られた生地も存在するでしょう。注意が必要です。

接触冷感は常に冷たく感じるわけではない

接触冷感は触った時に熱伝導により自分の熱が逃げて冷たさを感じるものですが、この効果は過渡的な現象であり、すぐに終わってしまうことを知っておく必要があります。繊維は熱的平衡により、放置しておくと周りの環境温度と同等になります。その繊維は人体と触れると数秒から数十秒で人体と同等の温度まで上昇し、平衡状態になると、人は冷たく感じなくなります。また、熱伝導率が良いということは人体よりも熱い環境にいると外部の熱が伝わって、より熱く感じてしまうということも言えますね。

シャリ感について

繊維ではシャリ感といって硬い繊維が冷感を感じるとされていますが、この理由は少し複雑です。実使用環境においては、硬い繊維は人体と接触させた際に変形しにくく、接触面積が小さくなるので、熱伝導という意味では少し不利になります。接触しなければ周囲は空気ですので熱伝導率が低くなるからです。冷感を感じる可能性があるとすれば麻は硬い繊維であるが比較的熱伝導率が高い。硬い繊維で織物を作ると構造上空隙が生まれて通気性が良くなり涼しく感じやすい。人間の感覚として硬いもの方が冷たく感じやすい。(メカニズムは接触面積が小さく圧分布が狭くなることにより受容体がそう知覚する?)ということで、熱の移動とは関係性が薄そうです。

接触冷感について思うこと

正直なところ、接触冷感は不要だと思います。否定してすみません…。理由は接触冷感を高めるための指標の数値は蜜で空気を含まない構造にして、凹凸のない方が高い数値を示しますが、このことはムレやすさと相反するからです。特にマスクにおいては、通気性があった方が呼吸により熱が逃げやすく快適だと思います。また接触冷感の効果はすぐに終わってしまうことも挙げられます。もちろん接触した際の冷感が好きという方も多いと思いますので、以上のことを参考にしていただき、いろいろな製品をお試しいただくのが良いかと思います。

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