羊毛はウールとも呼ばれる天然繊維で、羊の体毛を刈り取っているため、動物繊維のジャンルに属します。

羊毛の歴史

歴史は古く、紀元前にさかのぼります。中央アジア地方で羊が飼育され次第に東南アジア、ヨーロッパに伝わって行きました。初めは毛皮そのものを防寒用として使用していましたが、次第に毛を刈って、糸を作り、生地に仕立て上げることが出来るようになりました。イギリスの産業革命により毛織物が飛躍的に発展しました。日本では明治になると洋服文化が徐々に浸透し、毛織物の需要が増加しました。そこから今日まで、日本の毛織物は生産量を増やし、発展しました。

羊毛の特徴

最大の特徴はクリンプと呼ばれる縮れがあることです。日本語では捲縮(けんしゅく)と呼んだりします。動物の毛なのでランダムに縮れています。我々人間の中でも癖がある縮毛の人とそうでない人がいるように羊でも品種や個体差があります。

何故毛は縮れるのか?理由は大きく3つあります。

①タンパク質の結合のズレ

髪の内部にはS=S結合と呼ばれるタンパク質の結合が存在しますがその結合が、ズレて結合することで毛自体に歪みが生じます。

②内部に2種類の物質が並ぶ

毛はスケールと呼ばれるウロコ状の層があり、その中にパラコルテックス、オルソコルテックスと呼ばれる化学的に構造が異なる物質が貼り合わさった状態でできています。オルソコルテックスは水を吸いやすくパラコルテックスは水を吸いにくい性質があります。そしてその2種類のコルテックスが、不均一に並んでいると縮れます

③毛穴の形の歪み

毛が生えている毛穴が真円ではなく歪んでいると捲縮します。母細胞で作られた新しい毛が歪んだ毛穴を通ることにより、表面に出た際に毛も曲がります。毛穴が歪んでいることにより内部構造も歪んでしまい、捲縮するという仕組みです。これは我々人間にも言えることです。

羊毛の種類

メリノ

サイフォーク

ロムニー

ジャコブ

チェビオット

羊毛の産地

羊毛の主な産地は上記のようになります。羊毛は中国、オセアニアちほうで圧倒的な生産量を誇ります。圧倒的に多いのは、以下の3国です。

①中国 約47万トン

②オーストラリア 約36万トン

③ニュージーランド 約7万トン

羊毛の性能

羊毛は強度、ヤング率は小さいが、伸度は大きい繊維です。すなわち柔らかくてよく伸びる繊維であるといえます。

理由はむずかしいのでスルーOK。ケラチン分子の二次構造は通常αヘリノックス構造をとっているが、引き延ばすとβシート構造になりこれらの構造は可逆的に転移するため伸縮性に富むといえます。

羊毛の取り扱い

ウールは洗濯に気を使うというイメージがあるのではないでしょうか。ウール製品ははオシャレ着洗いを推奨されています。ウールのセーターを洗ったら縮んでしまったという経験をした方も多いと思います。ここで何故縮んでしまうのかメカニズムを知っておくと良いでしょう。

何故ウールは縮むのか

実は繊維自体の縮みはごくわずかです。縮みの原因は羊毛繊維同士の絡まりです。羊毛は動物の毛でありスケール(人間の髪の毛でいうキューティクル)と呼ばれるうろこが表面に存在します。水に濡らすとこのスケールが開き、摩擦が生じるととなりのスケールと絡み合い、硬く、小さくなっていきます。

この性質を利用した製品がフェルトです。羊毛繊維がバラバラの状態を集めて擦り合わせていくとどんどんと硬くなりフェルト化します。日本語では縮絨(しゅくじゅう)といいます。縮絨加工の際は効率よく生産するため、石鹸溶液などで湿らせてから揉んでフェルト化させます。

縮んでしまったら

一旦縮んでしまったら完全に元に戻すのは困難です。繊維は非常に細く、本数が膨大です。絡み合っている箇所は天文学的な数になりますので、それを一つ一つ全て外す事は不可能でしょう。しかし家庭にある身近なものを使って少し回復させることができます。

リンスを溶かした液につけて形を整えながら引っ張る

何故リンスなのかというと羊の毛は我々の毛と類似しており、髪の毛と同様に表面に油分をコーティングして滑らかにしてくれます。その際に絡みが解けやすくなるのです。完全には回復しませんが、普通に引っ張って戻すより確実に効果があるはずです。一度試してみてください。